「…ない」
「は?」

家についたとたん、依奈は困ったような声を出した。

いつも、学校から帰ると干した洗濯物をとりこむ事にしている。

今日もいつものようにとりこもうとしたのだが、無かったのだ。

奏はソファに座り、テレビを見ながら興味なさそうに聞く。

「何が?」

「…下着」
「はあっ!?」
思わず大声をあげてしまった。

「風でふっとんだんじゃねえの?」
「そうだったら全部無くなるはずでしょ?」

自分の下着だけ綺麗に無くなっているのだ。

「盗まれたんじゃね?」
軽くいう奏に依奈は愕然とした。

「…探してくる!」
「明日にしろよ。丁度土曜だし」
「けど…」

泣きそうな依奈の表情をみて、奏はぎょっとした。

「…しょうがないな。」
「え?」
「色は?」

探してくれるのだろうか。奏は立ち上がる。

「…ぴんく」
「柄。」
「赤の苺…」

言いたくなかったのに。
奏は、携帯をポケットにつっこみ玄関へ向かう。

「奏くん!外暗いし…一人じゃ見つからないよ…」

だからあたしも行く、と言う依奈をみて奏は少し考えて携帯をとりだし誰かに電話をかけた。