「…奏くん」
「あ?」

お世辞でも嬉しかった。
やっぱり、弟が好きだ。

「ありがとう」

微笑めば、奏は頬を赤く染める。

「…抜けてきたけど、どうすっかなあ。」
一番の問題はそれだ。

「家に帰ろうよ、今日宿題いっぱいでたから。」
「うるせーよ真面目人間。」

でも、実際行く所なんてない。金もない。

「…家、帰るか。」
「うん」

玄関をでる前、奏はちらりと依奈を見た。

ため息をついてから、おさげをとる。

「え?、ちょっと奏くん?」
何も言わずに眼鏡もとると依奈の髪をくしゃくしゃにした。

「俺のチャリに乗るなら、ブスは乗せられません。」
「うん?…あの、前がよく見えない。」
いつものしぐさ。

髪を耳にかけると、奏は笑って依奈の手をとった。

「しょうがねえな。」

まわりの、下校中の生徒が黄色い声をあげる。

美男美女カップル。

誰もがそう思っているだろう。