ただ、泣きそうな表情で恵美にしがみつく依奈。

今は何も聞かない方がいいと感じて、恵美は落ち着いたら話して、と告げた。

教室に戻ると、丁度携帯のバイブが鳴る。
メールが一通。
奏からだ。

【二時間目サボって屋上に来い】

ほぼ命令に近い。
無視すればするで後々めんどくさい。

「恵美ちゃん、あたしお腹痛いから保健室行ってくるね。」
「…了解。お大事に。」

親友に嘘をつくのは嫌だったが仕方ない。
依奈は早足で屋上に向かった。




がちゃり、
屋上の扉を開けたのとチャイムが鳴ったのはほぼ同時だった。

「奏くん、」
柵をバックに腰かけていた奏が目を開く。

「…秋に聞いた。」
「…うん?」
「悠真と一緒にいたって」
「…無理やり引っ張られて…」
「少しは危機感持てよ。」

はあ、と奏のため息が漏れる。
「言われなくても…持ってるよ」
「どうだか。」

奏は依奈の腕をひいた。
その衝撃に体制が崩れ、眼鏡が落ちる。

「奏くっ…!?」
強く抱きしめられた。
初めてでどうしたらいいか分からない。

体温が急激にあがっていく。