何処も怪我なんてしてないのに!

依奈は手を振りほどこうとしたが、できない。

「は、離してよ…」

「…」

ぱっ、と呆気なく離された手。

関係者以外は入れない場所に依奈は入ってしまっているのだ。

「…奏くん、あたしがここにいると、怒られちゃう、よ?」

「いいよ、別に。」

「クビになったら「気にしてねえし。…なあ、依奈。」

「?」

「俺の事好きなのに、なんで大地のとこに残るんだよ」


奏にはバレているみたいだった。
行き場の無かった気持ちが溢れてくるようだ。


「…そ、それは、「どっか行かね?」え?」

「二人でどっか行こう。気分転換。」

ぽんぽん、と頭を軽く撫でた彼はまるで年上のように感じた。

「お金ないのに」
「あー、…じゃあ来月まで待って」

その言葉に思わず笑った。

「うん。」