「…うん。一応客だから、手伝わなくていいよ」

乱暴にそう言い、割れた容器の破片を拾う。

「あ、」

ス、と切ってしまい指から血が流れた。

「奏く、」
「大丈夫!?奏っ!」

お盆を持ち、奥から走ってくる女性に依奈は目を見開いた。

見たところ、バイトの子だろう。

「…大丈夫です」

「ここは片付けておくから、奏は絆創膏もらってきたら?」

弥生はなれた手付きで片付けをしだした。

依奈はオドオドしながら取り敢えず席に戻った。

奏はハァ、とため息をつき依奈の元に歩み寄る。

「オキャクサマ、ケガをしていますので奥へ」

「え、」

ぐい、

手首を掴まれ、無理やり引っ張られる。

「ちょ、ちょっと、」

弥生はすれ違う奏と依奈をみて一瞬だけ悲しそうな表情を見せた。