「…、うん」

何も言い返せなかった。

自分の気持ちを言えば、想いは止まらなくなる。

「…ここだよ!」

秋の声に顔をあげれば、そこは大通りにあるカフェ。

こんなところでバイトしているのだと思うとなんだか心配になってきた。

「依奈ー!早くっ!」

ぐいっ、と腕を引かれて店に入ってしまった。

『お帰りなさいませ、お嬢様!旦那様!』

顔がひきつったのが嫌でも分かった。

「いやーん!イケメンいっぱいじゃん!」

キャラが変わった恵美に秋は驚いている。

「ご指名は誰になさいましょうか?」

薄いファイルを渡され、その中には執事の写真がプロフィールつきでのっている。

「薫と奏くんで。」
恵美が何も見ずに素早く答えた。

「見習いなのですが、「気にしてねえから」

秋の言葉に執事はにっこり微笑み、分かりましたと言い残し席を離れた。