「知ってるも何も、奏の「言わないで。」
悠真を無理やり押し退け、秋が見える位置に移動した。
秋は依奈を見て目を見開く。
「…あれ?、あんた本当に幾多依奈ちゃん?」
「そ、そうだよ!」
「でも、眼鏡…」
「秋、消えろ。」
悠真が不機嫌な口調で告げた。
「はいはい、今消えるよ」
悠真を怒らせると後々面倒なのだ。
秋は軽く手を降って、依奈を置いてその場を離れた。
依奈は隙を見て、全速力で走り出す。
普段彼女が体育でランニングしている姿とは比べものにならないくらい綺麗で、速い。
悠真は再び笑う。
面白くなってきた。
逃げていく依奈を見つめて、逃がさねえよ、と小さく呟いた。
*
「今までどこいってたわけ!?」
「めっ、めぐみちゃ!」
息を切らせて更衣室に入ってきた依奈を恵美は驚いて受け入れる。
体育は終わってしまっていたらしい。
他の生徒は雑談しているために依奈の存在に気付いていない。
「こ、怖かった…佐藤くんが…」
「佐藤悠真が!?何かされたの!?」
