「知らない、いきなり挨拶してきて…」
昨日、夜、眼鏡をかけていなかったために分からないのだ。
依奈が立ち上がると同時に、悠真は拳を突きだした。
「きゃ!」
とっさに避け、一歩身を引く。
「…意外にやるなあ?」
「っ、やめてよ…」
頬に汗がつたう。
怖い、嫌だ。
「ヒュウ♪」
悠真の口笛が鳴った。
「幾多依奈、気に入った。」
「っ、めぐ…ちゃ、」
親友の名を呼んだ。
助けてほしい。
心の底から願った。
「あれ?なにしてんの?悠真先輩!」
1年の少年がきた。
どうやら美術での課外授業らしい。
スケッチブックをダルそうに抱えた少年がいる。
「秋か。」
悠真は依奈から離れた。
秋は悠真の後ろをのぞく。
「もしかして、かつあげ?悠真先輩にしては珍しいな!女子から金とるなんて。」
「…ちげぇよ。」
秋 たしかにそう聞こえた。昨日、家に来た奏の友達だと依奈は理解する。
顔はあまり分からなかったが声が同じだ。
「…たす、けて」
「ん?その声…もしかして依奈ちゃん!!」
「秋、知ってるのか?」
