秋は言われるまま走り出す。

「っ、待てよ!!」

恵美を連れて走る依奈。

恵美はちらりと依奈を見た。今にも泣きそうな顔をしている。

「…、恵美ちゃん、大地くんの話、きいてあげて…」

いつになく震えた声音だった。

恵美は親友がここまで必死になっている事に驚いた。

「…うん!」

頼みを聞いてあげよう。

きっと何かあったのだ。

「ありがと」

客室が見えた。
後ろからついてきている秋が邪魔だ。

依奈は恵美に先に客室に行くように言った。

自分は立ち止まり、振り替える。

秋は歩みを止めない。

「…秋くん、」

ぎゅ、

急に抱き締められた。
「ちょ、秋くん!?」

「…離さないから」
「ええ!?」

「このまま、二人でどっかいけたらいいのに」

吃驚して目を見開いた。

「冗談だけどなっ!…帰ろう、依奈ちゃん。」

いつもと変わらぬ笑顔をくれた秋に依奈も笑った。