ゆっくりと彼女は振り向く。

「…あ、」
驚いたように目を見開く依奈。

「帰るよ」
奏が依奈の腕をひこうと手を伸ばす。

反射的に掴んでいた恵美の腕を離し、彼女に歩み寄る。

「…いいっ!あたしはいいから、」

早く、ここから出て!

ガコン、
「え?」「は?」

天井から巨大な檻が落ちてきた。
避けきれず、奏と彼の一番近くにいた薫が捕まった。

「なんだよこれ!」
「捕まってもたなあ」

余裕そうに笑う薫とは違い奏は焦る。

「依奈!!」
檻の隙間から手を伸ばす。

どうしようもなく不安だった。
だから、存在を確かめたかっただけ。

「…ごめんね、奏くん。」

大地のために、作戦を実行しなければいかない。

「恵美ちゃん、行こう」
依奈は走り出す。

恵美の腕を掴んだ。

「行かせねえよ、ブス」
悠真の、自分の呼び方が変わる。

「…お願い、どいて。」
「お前は俺等と帰るんだよ」