恵美が、 じゃあ先に入るね と風呂場へ向かう。
リビングに残された依奈は大地と二人きりだという事に気まずくなり距離をおく。
「…。」
「…。」
無言。
依奈はテレビのリモコンに手を伸ばすが大地がそれを遮った。
「ぅえ!?」
「駄目。」
「…なんで?」
むっ、と彼を睨む。
大地はバッと後ろを向いた。
(か、可愛っ…!)
「大地くん?」
どさっ、
「わ!」
急に押し倒された。
吃驚して目を見開けば怪しく笑う大地がいる。
「ど、どいて!!」
「い や」
「…ねえ、」
依奈の頬に触れ、そして口元をつり上げる。
「俺の父親、大手企業の社長なんだ」
だからなんだ、と依奈は聞こうとするがそれより先に大地が言った。
「依奈ちゃんのお父さんの会社、俺の父親のライバルの会社だったらしいよ。」
恵美も知っていたのだろう。さきほど大地が何か言おうとしていたのを止めようとしていた。
