キャー!
煩い歓声に人前だった事に気付き、慌てて離れる。
がっ、
奏の手が依奈の眼鏡にあたる。
地面に落ち、それを運悪く彼女は踏みつけてしまった。
二度目の歓声。
今度は主に男性軍から。
「すっげ」
「かなり可愛いじゃん!」
「やっべ、タイプかも」
「奏ちゃん」
「あ?」
「オレ等のお姫さまの素顔バレてもうたで」
「あーあ、折角俺等だけの秘密だったのに」
口では残念と言いながらも彼等の表情はあきらかに楽しんでいた。
「…依奈、さっきも言っただろ」
「え?」
「放課後まで待つ気ない。」
この場で言えと言うのか。
依奈は覚悟を決めた。
「あたし、奏くんが好「そこで何をしている!!」
体育教師の声が響いた。
彼を怒らせると面倒な事になる。
「逃げよーぜ」
秋は笑った。
「そやな…奏ちゃんにだけ良い思いさせるのもアレやし」
はあ。
深いため息のあと奏は依奈の手を引いて走り出した。