「まずは…、幾多依奈!」
びくっ!
いきなり名前を呼ばれて、おずおずとコートにでる。
相手の子はクラスでも人気のある、テニス部部長の可愛い女子。
(か、勝てるわけないよ~!テニスボールあたらないよね!?ね!?)
「幾多さんとはじめてだね!よろしくっ!」
「う、うんっ!」
可愛いなあ。
穏やかな雰囲気にこっちまでほんわかした。
「じゃ、サーブいくよ~」
「あっ、うん!」
バシィッ!
鋭いサーブが決まった。
依奈は動かない。
まわりの生徒が歓声をあげる。
*
「やっぱテニス部部長はスゲ~」
隣のコートから男子が見ている。
「ってか、幾多って結構胸あるよな!?」
誰かがそう言った。
「…顔が悪かったら意味ねえよ。」
悠真が吐き捨てるように言う。
どうして薫はアイツを美人と言ったのだろう。
足元にテニスボールが転がってきた。
悠真はそれを拾い上げる。
「…フン」
薫が言った事は単なる嘘だったのかもしれない。
悠真は騙されたかもしれないと言う事にイライラしてきた。
丁度、依奈とテニス部部長の試合が終わった。
0-30
もちろん依奈の負けだ。
「…」
何を考えたのか、悠真はもっているテニスボールを思い切り依奈に向けて投げた。
