今度は依奈がぽかんとする番だった。
「ついた」
薫の声にはっとして顔をあげた。
生徒玄関横の茂みからでたらしい。
「ありがとう薫くん!」
笑顔で礼を告げれば、彼は笑った。
「あ、薫」
丁度正門をくぐった秋と奏が薫を見つける。
「お礼欲しいんやけど」
「え?…んぅ!?」
ちゅ、
不意打ちにキスされた。
依奈は目を見開く。
すぐに唇は離れたが、思考がついていかない。
その光景を見てしまった秋と奏は気まずそうにしていた。
「…そーゆー事かよ」
奏の言葉をきき、依奈は誤解だと言おうとする。
「俺、放課後部活だから」
屋上ムリ
チクリと刺さる言葉。
依奈は表情を歪めた。
奏はただ、依奈から薫が好きだという事実を聞きたくないだけだった。
誤解だと気付かない奏に、薫は笑う。
「奏ちゃん、オトコの嫉妬は見苦しいで?」
「バカ。嫉妬なんてしてねえよ」
