秋は電話の相手が依奈だと知らない。
そのために興味なさそうに漫画を読み始めた。
「ふうん…なあ、」
『なあに?』
「また会えるよな?」
不安なのは両者同じなのだ。依奈のクスクスという笑い声が聞こえる。
『もちろん、また明日!』
「明日?」
『うん。…放課後、屋上きてくれませんか』
明日は部活がある。
「少しなら」
少し遅れるくらいなら大丈夫だろう。
奏は何も知らないまま承諾した。
「…一つ、聞きたいんだけど。」
奏は無表情で口を開く。
「薫のこと、どう思ってんの?」
さすがの秋もその言葉に反応した。
依奈だと気付いた。
『たぶん…友達だよ。
あたしね、やっと気付いたの』
「なにが」
『すきなひと』
気付いた。
絶対に自分ではないと奏は確信した。
悠真と一緒にいて、それで気付いたと言ったからだ。
すきなひと、それは悠真な気がしてならない。
『明日、放課後。教えます』
「…はあ」
