何かしただろうか。
恵美は視線に気付いていたらしく、遠くの席から心配そうにこちらを見ていた。
ある意味地獄のSHが終わり、ほっとため息をついた。
佐藤悠真は席を立ち、体操着を持って教室から消えた。
「依奈!あんた何かした!?佐藤悠真がかなりガン見してたじゃない!!」
「し、知らないよ!あたし何もしてないし!」
ぶんぶん、と首を横にふる。おさげが左右に揺れた。
「とにかく、体育遅れるから早く更衣室いくわよ」
「うん…」
自分の体操着が入っている鞄を持ち、教室をでると廊下で悠真が二人の三年女子と奏と話している。
見るからに不良で、関わりたくない。
依奈と恵美は気にしないようにして早足で通りすぎようとした。
すれ違い様に、悠真の口が動く。
「…キモ」
たしかにそう聞こえた。
振り向けば、何事も無かったかのように話している。
一瞬だけ奏がこちらを見た気がした。
「奏、学校帰りにマック行かない?」
「…あー、うん。奢ってくれるなら。」
「しょうがないな~、今日だけよ。」
女子生徒の茶色に染まった短い髪が揺れた。
依奈はうつむき、体操着を両手で抱き締めて走った。
