それからの約1週間。
彼は毎晩アタシの、
なんの面白味もない
路上ライブに
現れるよぅになった。
1曲ごとの拍手以外
なんの会話も無い
変な関係。
1人のお客さんと
1人のギター弾き。
それは、
今まで1人でやってきた
アタシからは
考えられない
異様な光景だった。
『―って人がいるの。』
「へぇ~、
なんか変わった
人だね。」
『でしょ?』
補習も予定もない
夏休み真っ只中の今日。
アタシはベッドの上で
転がりながら、
由榎莉と長電話中。
話題は自然と
路上ライブの彼の
話に変わった。
『不思議だよねー、
毎日来るなんて。』
「羚華のファンとか?」
『だったら
どぉしよぅ?』
「ないない、
大丈夫!」
『何ソレ、
失礼しちゃう。』
フンと拗ねる素振りを
見せたら、
機械の向こうから
くすくすと
笑い声が聞こえた。
ったく
由榎莉ったら…!

