夢枕

俊介を乗せた車は、気付かれぬままに去っていった。
それを見ながら、女はこう言った。
「いくら夢がよくても、現実から逃げちゃいけないわね」
すると男は頷いた。
「ですね。けど、彼は夢枕がなかったら、きっと、自殺してましたよ」
女は薄く笑った。
「だから、よかったのよ。彼は夢を選んだ。もう現実には、興味がない。私たちも楽だわ」

携帯電話を開き、女はあるところへ連絡した。
「もしもし。新しいのが、手に入りました。今日中には届きますよ」
相手はわからないが、声からすると老人だった。
「わかった。金はいつものように、振り込んどくよ」
無理やりに女は明るく言った。
「これからも、我が会社……」

















『臓器提供株式会社をよろしくお願いします』

そう言って、電話は切られた。