クスクス、クスクス。
みんなが笑っている。
リストラした哀れな自分に。
実際、周りの人間は笑ってなんかいない。
ただ、俊介の脳内に被害妄想が広がっているだけ。
その被害妄想が、自殺へと繋がってしまうときもある。
被害妄想とは恐いものだ。
人間のどこか大切なところを、狂わせてしまう。
そんな力を持っているから。

気が付けば、ベンチに座っていた。
片手には買った記憶のない、冷めた缶コーヒーが。
地面の働き蟻を見つめ、缶コーヒーを少し飲む。
蟻の世界には、リストラなんて存在しないんだろうな。
そんな蟻たちを羨ましがる自分が、本当に虚しく感じた。
俺の人生って……何なんだろう。
俊介は大きくため息を吐き、缶コーヒーを飲み干した。