隼人がゲームに夢中になっているため、しーんと静まり返った時間だけが流れる。
それがあまりにも気まずく、あたしは口を開いた。

一馬との共通の話題。
それはこの話題以外は思い浮かばなかった。



「東條華って知ってる?」

一馬は黙ってあたしを見る。
いつもの無表情で。
ただ、そのあまりにも整った顔で見つめられると、心臓がドキドキしてどうにかなってしまいそうだった。

「…知らねぇ」

口元すら緩めず、一馬はそう答えただけだった。
恐ろしい石像男。


「華は知ってるって」

「あっそ」

食いつくあたしに対して、いつもの素っ気ない返事が返ってくる。
想像通りだ。
でも、あたしは見逃さなかった。
一馬の眉間がほんの一瞬だけ引きつったことを。



何を考えているのか分からない。
恐ろしいほど無表情。
でもあたしはそんな一馬をもっと知りたいと思っていた。

一馬があたしをはね除ければそれだけ一馬に近付きたいと思った。
何故かは知らないけれど。