あたしは自分の中で理想を作り上げていた。
優しくて、かっこよくて、強いかずくん。

でも、あたしの目の前にいるかずくんは、あたしの理想とはかけ離れていた。
意地悪で、冷たくて、無関心なかずくん。


人生ってそんなもの。
期待したらそれだけ現実が怖くなる。
そんなこと、分かっていた。
…分かっていたんだよ。




絶望と同時に怒りがわき上がる。

かずくんもあたしを馬鹿にして笑うんだ。
そう考えると我慢が出来なかった。




気付いたらあたしは立ち上がっていた。
かずくんのブレザーの襟首を、思いっきり掴み上げて。