「行くよ、芽衣!」

そう叫んで無鉄砲に駆け出す隼人。
何が起こっているかも分からないのに。

それでも、あの怯えた華を思い出す度、一馬のことが心配になってくるのだった。




あたしはケーキを抱えたまま、階段を駆け上がった。
先を行く、隼人の背中を追って。

あれだけ時間をかけてケーキを作った。
あたしの傑作だった。
それなのに、今は散々な状況になっているに違いない。

でも、それよりもずっとずっと、一馬の安否が大切だった。






時々街で聞こえた「一馬」という声。
一馬はやっぱり狙われていたに違いない。
一馬はあたしたちに迷惑がかからないように、一人で対処することにしたんだ。

相談してくれれば良かったのに。
弱音を吐いてくれれば良かったのに。