あたしは『桜病院』という病院に運ばれていたようだ。
桜井一族が経営する大病院。

倒れたあたしを心配して、一馬が救急車を読んだらしい。
しかし、救急車に乗っていた救命士は、運悪く一馬のお父さんの知り合いだったのだ。




「全く、迷惑な野郎だ」

一馬は呟いた。
その声は、嫌悪に満ちていた。





一馬は、明らかにお父さんを嫌がっていた。
その嫌がり方は異常なほど。
二人の間に何があったのか聞きたかった。
しかし、家族の問題に簡単に他人が入れないことは、よく理解していた。

だからあたしは待つことにした。
一馬が教えてくれるまで。