恋の唄



溢れそうになる涙を必死に堪えながら、私たちは自分たちの高校の応援をするべくコートに向かう。

空いてる席を探して階段を降りていると、私の手を引いていた伊織ちゃんが動きを止めた。

どうしたのかと様子を伺うと、伊織ちゃんの目の前に……


真柴君がいた。


真柴君は私を探るように見つめている。

一度だけ伊織ちゃんを見たけど、またその視線はすぐに私に戻って来て、口元に笑みを浮かべた。


「何かあったな」

「……何もないよ。あの、真柴君。この子、私の親友の古賀 伊織ちゃんって言うの」


泣きつくわけにはいかない。

これは私の気持ちの問題で、真柴君に甘えるのは間違ってる。

まして、伊織ちゃんが一緒なのだから私は親友の恋を応援しなくちゃ。

味方になってくれると言ってくれた親友の恋を。