恋の唄



華原君には彼女がいる。
だから私は友達のポジションにいるんだ。

隣りにいて、支えになれるようにって。

今はそれだけでも華原君の側にいられるなら、切ないけど嬉しいから。

なのに、華原君は少しずつ少しずつ私に伝える。

肝心なところを避けるようにしながら、期待させる事を言葉にして。


「華原君は……ずるい」


思わず零してしまうと、華原君は私を見て苦笑いする。


「だから権利はねぇって言ったろ」

「……友達としてなら、権利はあるよ」


友達という言葉を出して、自分で気付く。

もう、さっきから私たちの会話は友達としてのものじゃない事に。


「結衣、俺は──」


真剣な表情で華原君が私に何かを言おうとした時だった。