華原君は浅くベンチに座り、背をもたれて空を見上げていた。

変わり行く赤い空を、ぼんやりと。

私は少しためらった後、公園へと足を踏み入れて彼の側に寄る。


「華原君……?」


少し小さかったかもしれない。

けれど彼には届いたようで、驚いたように顔を正面に向き直した。

視界に私が捉えられる。


「結衣……何でここに」

「私の家、この近くなの」

「ああ……そっか、そーいや聞いた気がするかも」


忘れられていた事に、少しだけ心が痛んだ。

だけど、彼女でもない私の言葉を全部覚えてて欲しいなんてただの我侭だよね。

私は微かな痛みを振り切るように笑みを作って問い掛けた。


「華原君はどうしてここに? お家、こっちじゃないよね」

「んー…ちょっとな、近くに……知り合いの家があって」


濁すように言葉を紡いだ華原君。

何となく、直感する。
彼女の家がこの辺なんだろうって。