病院での光景を思い出しながら挨拶して頭を上げた時。


「華原君」


結衣の母親が俺に声をかけて来た。


「はい」

「自分を責めないでね。結衣はきっと、望んでいないから」

「……はい」


少し笑みを浮かべて返事をすれば、同じように結衣の母親も笑んでくれる。

だけど、俺はその場から立ち去ると同時に思っちまった。


結衣が望んでいない。
確かにそうかもしれない。

結衣ならきっと、真剣で泣きそうな顔で言うだろう。


華原君は少しも悪くないよ。


そう言ってくれる。

けど、それは想像でリアルじゃない。

俺は……結衣の口から聞きたい。

結衣の声で聞きたいんだ。