家の中に入ると、まず飛び込んで来たのは結衣の遺影。
結衣らしい、柔らかい笑みを浮かべたソレに、俺は隣りで同じように笑っていた結衣を思い出して胸に痛みを覚えた。
海に促されるように焼香して、昨日病院で会った以来の結衣の両親に挨拶した。
病院で初めて会った結衣の両親は俺を責めなかった。
呼び出しのは俺で、俺が急がせなければ結衣が事故に合う事はなかった。
そう謝って頭を下げた俺に、結衣の両親は驚いた事に『ありがとう』と言ったんだ。
『息を引き取る時、あんなに安らかだったのは華原君のおかげだろう』
優し過ぎる言葉と悲し過ぎる現実に、俺は涙を必死に堪えてもう一度無言で頭を下げた。



