恋の唄



悪いのは結衣じゃなくて車の方だった。

歩行者の信号が青に変わったのを俺も確認してたし。

なのに車が突っ込んで来た。


結衣の体を、跳ね上げる速度で。


その光景が、瞬間が、頭から離れない。


駆け寄って抱きかかえた時、纏わり付いた濡れた感触も。

俺を見つめる結衣の瞳と、僅かに浮かべていた優しい笑みも。

息を引き取った後の、冷たい手も。


溢れ出るように俺を支配しちまう。