「結衣」


伊織ちゃんの声がして、私はお弁当の入った袋を持つと席を立った。


「ごめん、今から行こうとしてた」


大き目の声で伊織ちゃんに笑みを向けて、私は教室を出る。

間際、まだ教室にいた華原君の視線を感じたけど、怖くて見る事が出来なかった。

視線が合ったら、どうしていいのかわからない。

反らされるのも……


怖いから。


伊織ちゃんの教室に向かって廊下を歩いていると、伊織ちゃんが明るい声で言った。


「結衣。今日は天気いいし屋上行かない?」

「……どうしたの、急に」

「んー、たまにはと思って」


優しく笑う伊織ちゃん。
「どうかな?」と問われて、私は頷いた。