溶け始めたカキ氷を口に入れると、それが合図になったかのように大きな音と共に満開の花が夜空に輝く。


「よし、今年も特等席で見れたぜ」

「凄いね! 本当に特等席」


カキ氷を食べるのも忘れて夜空に咲き続ける花火を見つめ続けて……


「花火って綺麗だよね」


零すと、華原君は「だな」と同意してくれた。


「すぐに消えるのもったいねーよな」

「本当だよね。写真やビデオに残しても、実際に見てるのには敵わないし」


感じる音や振動、一緒に見ている人と分かち合う時間。

それは心で記録するしかなくて……

だけど、それもやがて少しずつ薄れていってしまうのだろう。

いつか……華原君の中から、私も薄れていく時が来るのかな……