差し出された包みに入っているのは、何かの丸薬のようだ。持ち上げると少し重量があって、ちゃりちゃりと中で音がしている。
メイドさんは言った。
「それは私の故郷に伝わる栄養食です。食欲が無いときにでも。水無しでも大丈夫ですから」
「あ…」
「失礼します!」
もう一度頭を下げて、彼女は走り去っていった。
廊下に残された俺は、「ありがとう!」とバカみたいにその背中に声をかけた。
部屋に戻ると、ベッドで夜統がすやすやと寝息を立てていた。
仕方なくメイドさんに貰った丸薬をテーブルに置いて、俺も夜統の隣のベッドに潜り込む。
身体的な疲労は感じないが、精神的に疲れ切っていた。
人が死に行く様を、近くで見たのは初めてだ。敵とはいえ、自分が関与しているものだと自覚したときの恐怖と罪悪感は、今までに無い苦痛だった。
(あぁ、くそ…)
俺は頭から布団をかぶり、全ての思考を遮断した。


