お粥の器を返すために部屋を出ると、メイドらしき女の人がドアの横に立っていた。待ち伏せていたかのようなタイミングに少しビックリしたが、俺は平静を装って器を差し出す。


「ちょうどよかった。これ、アズサに返してくれます?ご馳走さまでしたと伝えてください」


そのままくるりと背を向けて、俺も疲れたし一眠りしようと思った。しかし、そのメイドさんが俺を呼び止めたので、それは叶わなかった。


「なんですか?」

「あなたたちが、噂のクリアネスなんですよね」

「……それが何か?」


彼女は俺の返事に何か言いずらそうに口をモゴモゴさせると、手に持った器をイジイジと指で弄んだ。


「その…これ」


ポケットから何やら小さな包みを取り出して、彼女は頭を下げる。


「さっきの戦いで、腕を負傷した兵士が居たでしょう。あれは私の兄なんです。その…クリアネスの一人が…倒れたと聞いたので」