ガラスのコップに入った冷たい牛乳を飲み干して、味も量も申し分ない朝食を終えて、俺は食事が入っていた盆を持ち上げた。

ドア横のボタンを押せば、メイド的な人が食器を下げに来てくれる。

俺達は、ご丁寧に壁に用意された返却口に食器を返すだけで良いのだ。

運動不足で早くも生活習慣病になってしまいそうだ。

等と考え事をしていたせいか、無意識に盆が傾いた。


「幸村、」

「へ?」


パリン!


その様子に気付いた夜統が俺の名を呼ぶが、色々間に合わずに、軽い音をたてて、ガラスのコップは粉々に砕けてしまった。

慌てた俺は思わず手で破片を拾う。


「バカ、触んな。指切ったらどーすんだよ」

「いてっ」


やはり夜統が注意してくれたが、俺はすでに指を切ってしまった。

指先から赤い血が溢れる。

夜統は溜息を吐きながら俺の指を見て、不意に怪我した方の手に触れてきた。


「……何?」

「良いから黙ってろ」


首を傾げた俺に、夜統はピシャリと言い放った。

俺は仕方なく、口を閉じて彼を見た。