その声がした途端、男たちの態度が一変した。


「アズサ様!」

「なぜこのような場所に…」


皆慌てふためき、声の主を見ている。

そんな俺も、声の主を見て言葉を失い、呆けてしまった。


「嘘だろ……」


なぜなら、彼女は俺のクラスで学級委員をしていて、成績トップで有名な音梨梓そのものだったからだ。

俺が見間違いをするはずが無い。

ホクロの位置や、紅茶色の眼鏡、更に髪の毛の微妙な癖や声まで……

一回見たこと聞いたことを忘れない俺が、他人の空似を見間違うことはしない。

ならば、彼女もこの世界に飛ばされたというのだろうか?


「音梨さん!」

「おま…知り合いか?」


夜統が尋ねてきた。 彼女も訝しげに眉を寄せ、首を傾げてきた。


「…私は面識が無いけど…何処かで会ったかしら?」

「音梨さんも、屋上から来たんだろ? この訳判んない世界、何なの?」


質問攻めをする俺に、男は怒りを顕にした。


「貴様! アズサ様になんて口の利き方をするんだ!」

「待ちなさい」


アズサは、再び凛として言った。


「…詳しく話を聞かせてもらえないかしら?」