取り敢えずここでじっとしていても始まらないので、この森を抜けてみることにした。

もし仮に、死後の世界なのだとしたら、何処かは判らないが、『三途の川』とやらが有るはずだ。

……まぁ、この説も迷信でしか無いのだが。


「何処が道になってるか判んねーな……」

「お前山岳部とかじゃねーのかよ」


俺の呟きに適当なことを言い始める夜統。 まず言っておくが、俺達の学校に山岳部は無い。

ワイシャツにスラックスという、何とも身動きしずらい服装でこの獣道を抜けるのは、相当な時間と根気を費やしそうだ。

視力の良い俺が先頭なので、何か有ったら真っ先にやられるのが俺。

そう考えると、歩みが滞り気味になる。


最初は適当な会話をしていたが、だんだん疲れが見え始め、やがて草を踏み付けるザクザクと言った足音しか聞こえなくなった。

ワイシャツも薄汚れ始め、なんだか終わりの見えない道を延々と歩かされているような、気の遠くなるような気分だ。


「……ちょ、休憩しねェ?」

「…んだな」


俺が振り返って尋ねると、夜統は溜息と共に頷いた。