「夜統!」


きしんだドアを開け、俺はテストを掲げた。


「幸村か。追試終わったのか?」

「うん! おかげさまで! 合格したんだぜ、ホラ…」


俺がテストを見せようと、アイツに手を差し出したその瞬間、


ビュウ!


突風が吹き付け、俺の指先から紙を飛ばしてしまった。


「あ!」


せっかく数学に関しては高得点を取ったのに、飛ばされてしまうのは勿体ない。

俺は無意識に、落ち葉のように舞うそれを追い掛けていた。


「オイ、幸村…」


だからだろうか、俺の名前を呼ぶ声も無視して、走り出していた。


「落ちるぞ!」


と、初めて聞いた夜統の怒鳴り声の後に、俺の体が傾いた。

バキッ、と嫌な音がして、俺の体は倒れこむ。

フェンスの金具が外れ、宙に浮いたような感覚が包む。


その時、俺の腕を何かが掴んだ。


「! 夜統…」

「馬鹿お前…死ぬ気か……!」


が、しかし


夜統がバランスを崩し、俺達はそのまま重力にしたがって落下してしまった。


「マジか………」


こんなことなら、もう少し真面目に生きるんだったな…

そう思いながら、俺の意識は飲まれていった。