そんなこんなで、俺は屋上でアイツの講習を受けた。

口調は乱暴だが、下手な教師よりずっと判りやすく、俺の記憶力も相まって、直ぐに飲み込むことが出来た。

俺の特技を目の当たりにしたアイツは相当驚いていたようだが、その仏頂面が崩れることは殆ど無かった。



そして、追試の日がやってきた。

今日は数学だ。

俺の血の滲むような努力が、報われるときが来たのだ。


「俺やべェよ! オイ助けろよ鈴音!」

「知るかバーカ。俺は一抜けさせてもらうぜ」


伸が縋るように見てきたが、俺は鼻を鳴らして席に着いた。

この追試から逃れれば、遊び放題居眠りし放題の楽しい生活が待っている。

解答欄は全部埋めた。

埋めた者から順に教卓へ向かい、その場で採点をし、合否を判定する。

目の前で丸を付けられたりバツを付けられたりするのは、言いようの無い緊張感がある。

ミリオネアで、みのさんがタメを作っている時のような、「あぁ、早くしてくれェェ」的な緊張感だ。


「よし、」


俺の目の前には、98と言う赤い数字が突き付けられた。


「合格一人目だ! やれば出来るじゃないか、幸村」

「裏切り者〜!!!」


教師の言葉のあとに飛ばされた俺への野次。ふっ、お先に失礼するよ。

俺は解きたて丸付けされたてホヤホヤの解答用紙を持ち、屋上に駆け上がった。