渋々といった感じだったが、無事に俺達は説教から解放された。

夜統は居心地悪そうに歩いていたが、やがて口を開いた。


「……何で俺なんか庇ったんだよ」

「え……」


そんなことを聞かれても、返答に困る。

ただ、俺は……


「お前、そんなに悪い奴じゃない気がしてさ…。オジサン助けたとき、無事なの知って安心したろ? だから、皆が思ってるほど悪い奴じゃないっていうか…」


うまく、言えないけど。

なんて付け足すと、夜統は頬を掻いた。


「お前みたいな奴…初めてだ」

「確かに。お前見た目怖いしな」


俺が笑うと、夜統もつられて笑った。

何だ、結構女子にモテそうな顔してんじゃん。

普段の仏頂面からは想像もつかない爽やかさだ。


「お前には借りが出来たな。その内ジュースでも奢ってやるよ」

「やりィ、あ、ちょっと待って。ジュースは良いからさ、お願いがあるんだよ」


俺は良いことを思いついた。

我ながら天才だ。


「俺、世界史以外赤点なんだ。追試対策に勉強教えてほしいんだけど…」

「…そんなんで良いのか?」


夜統は首を傾げながらも了承してくれた。

学年一位に教われば、追試なんか楽勝だ。

俺は一人ほくそ笑んだ。