「お前は、一体何度言ったら判るんだ!? お前の行動が、村井先生にも、学校全体にも迷惑を掛けているんだぞ?」


校内で一番恐れられている佐藤先生の怒鳴り声は、ドア越しで聞いても足が震えた。

それを右から左へ受け流す夜統もタダ者では無いが。


「佐藤先生、待ってください」

「ん? 何だ、幸村。何か用か?」


俺が仲裁に入ると、村井先生が目を丸くしてこちらを見た。

夜統も、切れ長の瞳をポカンと見開いた。


「俺、その時ちょうどその近くを通ったんですけど、彼はカツアゲされてるオジサンをオヤジ狩りから助けていました。だから、この場合、彼は悪くないと思います。悪いのはオヤジ狩りグループです」

「…お前………」


夜統の驚いたような、恥ずかしそうな声が聞こえる。

昨日の自信に満ち溢れた声とは別人だった。


「それは本当か? 夜統に脅されてそんなことを言わされてるのか? 無理しなくて良いんだぞ?」


村井先生が心配そうに言った。

何だ、自分のクラスの生徒を信用できないのか、この担任は。


「本当です。俺は俺の意志で言ってます。夜統は悪くありません」


俺はきっぱりと言ってやった。スッキリした。