あたしはその場に立ち尽くしていた。

遥斗が近寄ってきた。

『あれは…恵梨子ちゃんが無理矢理…』

肩を触ろうとしてきた遥斗の手を振り払った。

『何も聞きたくない…信じたくない…。遥斗に…演奏…聴いて欲しかった…』

言葉を言いながら涙がこぼれてきた。今まで遥斗のために頑張ってきたのに、遥斗はきてくれなくて保健室で恵梨子ちゃんと…

そんなコトが頭中を駆け巡り耐えられなくなったあたしは走って保健室を出て行った。

『紗菜…待って!』

その言葉はやまびこのように耳に入ってきたが今のあたしには受け止めるだけの気持ちがなかった…。


それを廊下の端から見ていた恵梨子は笑みを浮かべていた。