「まあ、遠い遠い所から
 来たっていう事、
 あんまり気にしないで。」

という事にしておきました。

「それより、
 この辺案内してよ。
 もっと町の中
 見てみたいな、
 時間はあるから。」

「ああ、いいよ、
 町じゃなく村だけど。」

確かに、この後
人工が増え、
二十年後、村から
町へ改名するのです。

「あっ、そうなんだ。」

タケシは慌てつつ、
もっと地元の歴史位
知っておかなければと
反省しました。
とりあえず、
ノブオに町の中を
案内してもらう事に
なりましました。
冷静に考えれば、
今、タケシに置かれている
状況は、超常現象とも
いうべきか、正に特殊であり、
そう経験できるものでは
ありません。
ここは、落ち込んで
ばかりいずに、
そして、古き良き、
三十年前を楽しもうじゃないかと、
開き直り、楽観的に
考えるよう努める事にしました。

「なんか、色々変わってて
 面白いや。」

三十年前との
町の変化ぶりを
楽しみながら町を歩きました。

「そういえば、ノブオ君、
 背中にも傷があるよね?
 それもまた、
 高い所から落ちたとか?…。」

タケシは、ふと、
父ノブオの背中に
十センチ程の傷跡で、
縫ったような跡も残っていたのを
思い出しました。
なぜそんな傷を負ったのか、
その時の事を聞いても、
父ノブオはためらったように
口を閉じてしまい、
教えてくれませんでした。