「君の名前は?」

男の子は、
初めて会ったタケシが、
なぜ色々と聞いてくるのだと、
不思議に思いながらも、
その問いに答えました。

「ノ、ノブオだけど、
何でそんな事聞くんだよ。」

なんと、その男の子も、
父と同じノブオ
という名前なのです。
タケシは、驚きのあまり
声が出ませんでした。

「み、名字は、さ、斎藤…?」

やっと出た声を
振り絞り聞きました。

「う、うん、何、
 俺の事知ってんの?」

斎藤、その名字も、
やはり父斎藤ノブオと
同じものでした。
そう言われて見れば、
目の前にいる、
ノブオという男の子は、
どこか、自分の父ノブオに
面影があるようにも
思えてきました。
タケシは、今、
自分に信じられないような
出来事が起きている事を
感じずにいられませんでした。

 それは、目の前の
ノブオという男の子が、
タケシの父ノブオの、
子供の頃の分身であるという事です。
これは、夢なのか?
もしくは、父を亡くした
ショックに、幻覚を
見ているのか?
それとも、この男の子は、
過去から来たのか…?
色々な思惑が、
タケシの頭の中を
飛び交いました。
ノブオは、混乱で
焦点の合わない
タケシを心配そうに見つめました。

「ねえ、だいじょうぶ?」

「えっ、うん…。」

その問いかけに、
ハッとすると、
タケシは自分のホッペを抓り、
目が覚めるような
痛さがあるのを確信しました。
これは、幻覚や夢ではない、
という事は、この少年は、
過去から来た
子供の頃のノブオなのだと、
タケシは結論付けました。
何らかの形で、
あの秘密基地が
過去と未来を繋ぐ
架け橋になっていて、
そこへ、過去のノブオが、
タケシのいる
この時代へと
タイムスリップしたのだと、
そう考えるしか、
この状況に説明が
付かないのです。