「今日から明日にかけて、
 フェーン現象が
 発生するだろうって、
 ニュースでやってたぞ。」

ノブオは苦い顔をしつつも、
てきぱきと消防士の
制服に着替えながら
ユウコに語りかけました。

「あら、そうなの?
 またどっかで、
 火事にならないといいわね。」

ユウコは、
昼食の後片付けをしながら、
ノブオに答えました。

「まったくだ、
 あのフェーン現象ってやつは、
 変に高温で
 乾燥してるからな、
 少しでも火種があると、
 巻き込んで、
 大きな火事にしやすいんだ、
 ほんとにタチが悪いんだ。」

そこに、居間で
テレビを観ていたタケシが
口を挟みました。

「でも、その為に
 父さん達、
 消防隊がいるんでしょ?」

「ああ、そうだが、
 この職業、暇に
 越した事はないんだぞ。」

「そっか、じゃあ父さん、
 暇すぎて失業しちゃう
 位がいいんだね。」

タケシの言葉に、
ユウコもノブオも大爆笑です。

「確かにそうだ、
 火事は何でも
 焼き尽くしてしまう、
 だから、お前達も、
 火の後始末には
 充分気を付けてな。」

そう言って、
ノブオは夜勤へと
出て行きました。

その夜、タケシは
授業参観で読み上げる
作文を書き終え、
眠りに就きました。

 朝になり、タケシは起きると、
いつものように
二階から降りて来ます。
しかし、そこには、
いつもとは違う、
母ユウコがいました。