「ごちそうさま、
 僕、そろそろ帰らないと。」

「あっ、そうね、
 大丈夫?遅くなっちゃって、
 お父さんとお母さん
 心配してるわよね、
 外は真っ暗だし、
 送ってあげるわよ。」

カズコの気づかいに慌てました。

「あっ、いや、
 いいんです。
 僕の母さん、
 この近くに友達の家があって、
 そこにいるから、一人で…。」

とっさに、ごまかし、
席を立つと
ノブオも立ち上がりました。

「んじゃ、
 またいつでも遊びに来なよ。」

「うん…。」

ノブオは、玄関口で
いつまでもタケシに
手を振りました。
この時ノブオは、
タケシを未来の
自分の息子になる事
など知らずとも、
ほんの数時間
接しただけなのに、
この時、どこか
タケシが異様な程
忘れ難く、
特別な存在に思えたのです。