「うわっ、若すぎっ。」

やはり、三十年の
ギャップは大きく、
またもや声に
出してしまいました。

「どーも、リョウコおばさん、
 サチコおばさん。」

小声で二人の幼子に
声をかけました。

”二人共、ニコニコと
愛想の良い所は
三十年後と変わらないな”

タケシはそう思いました。
そして、しばし、
この家族を見渡しては、
含み笑いをし、
三十年のビフォーアフターを
楽しみました。
ふと、食卓の脇に
置かれていた、
ラジオのニュースが
耳に入りました。

「昨日から、
 フェーン現象が発生しており、
 今晩にかけて、
 さかんに高温の乾燥風が
 吹き荒れると思われます。
 火事が発生しやすいので、
 気を付けましょう。」

それは、地元の
ローカルラジオの
ニュースでした。

”また、火事起きないと
いいけどな…。”

また、タケシの頭に
そんな思いがよぎりました。
そんな考え事を遮るように、
カズコの声が入ってきました。

「それにしても、
 初めて見た時から
 思ったんだけど、
 ノブオとタケシ君って
 何となく似てないかしら。」

カズコが、茶碗片手に
タケシとノブオを
見比べています。

「いや、それよりも、
 俺の子供の頃に
 そっくりだな。」

そう言って、相変わらず
早食いのゴロウは、
すでに食べ終えて、
ようじを口にやりながら、
タケシの顔をじっと
見ています。
確かに、タケシは
親せき中から、
じいちゃん似だと
言われてきたので、
そう言われるのも
当然でした。