「ねぇねぇ、カイザーって呼んでいい? 貴方明日のお祭りに来るの?もし行くなら皆で行こうよ! 皆で行ったほうが絶対楽しいと思うんだよね」
その言葉を聞いて、アーベルがアリーセの膝に飛び乗ってきた。
もう少しでアリーセの持つフォークから、パイが落ちるところだった。
「ったく、危ないでしょ! ヤキモチ焼かないの!」
ぴしゃりと言い当てられ、アーベルは黙ってしまった。
ふと、ディルクもヤキモチとか焼くのか考えてみたが、ありえないと思いすこしガッカリした。
「それはいいわね。大勢のほうが賑やかになるし、お皿に残るパイの欠片も賛成してくれてるもの」
ロミルダは同意を求めてベルホルトを見たが、既にベルホルトは優しい笑顔で頷いている。
それを見て、ネムは羨ましいと心から思った。
自分を常に見守ってくれていて、常に傍にいてくれる相手・・・そして夫という存在。
ディルクがいいなと考えたけれど、すぐにその考えは消えた。
――だってこの子は守り猫じゃない。


