「あ、あの。ネムさん!?」
ハグに慣れていないのと、急すぎてビックリしたのか、陽汰はドギマギしていた。
それに気付いたネムは、ハッとして恥ずかしそうに離れた。
「ごめん! 久しぶりに会ったから、思わずハグしちゃった」
ペロッと舌を出すネムを見て、何がなんだか分からないと言った表情を皆がしている。
――もちろん、ディルクを除いて。
すると、台所から声が聞こえた。
「いらっしゃい、お出迎え出来なくて悪いね。」
お婆ちゃんの声だ。
皆が台所を覗くと、何かやっているのが後姿から伝わってくる。
「魔法薬を調合している途中でね。皆が来ることが分かったものだからふんわりスープとビーフシチューを作ろうと思ったのはいいんだけど……」
話していてもなお、何かをしているらしい。
「見てのとおり両手が塞がっててね。カイザーに頼んだのだけど恥ずかしいって言うから魔法で扉を開けたんだよ」
お婆ちゃんはこっちを振り返り、いつもの笑顔を見せた。
そしてネムにウィンクをしてみせた。


