「お邪魔しまーす」
ネムが先に入ることにした。見慣れたお婆ちゃんの家なのに、なぜこんな恐る恐る入っているのか分からなかった。
別に怖いわけではないのだが、扉が勝手に開いたのが初めてだったので緊張していたのかもしれない。
ネムの後に続いてぞろぞろと入ってきた。
そして最後にベルホルトが入ると、ドアが閉まった。
ディルクとアーベルは軽やかにベルホルトの肩から降りた。
部屋の中には灯りが灯され、いい匂いが充満していた。
ふんわりスープの匂いも混ざっている。
ネムは口の中いっぱいにヨダレが出てきていることに気付き、垂れていないかと急いで口を拭いたが大丈夫だった。
奥に進むと、居間には陽汰が居た。
いつかの市場の様な格好をしていて、しっかりフードを被っていた。
そして皆が居間に入ってくるのを確認して、彼はお辞儀をした。
何か言おうとして口を開こうとしたが、何も言えなかった。
「っ!?」
――凄い勢いでネムがハグしてきたからだ。
突進とも呼べるそのハグに、陽汰は目を丸くしている。
もちろん、他のみんなも。
ただ、ディルクだけはその光景を無表情で見ていたが。


