上の部屋へ上がる途中、ディルクは何か気配を感じ後ろを振り返ると、そこには陽汰がいた。
「小僧!! お前!!」
急に振り返られてビックリしたのか、陽汰は言葉に詰まってしまった。
「あ、あの、オレも心配で、あの、ネムさん……」
「立場をわきまえろ。お前は少し自分の存在を考えたほうがいい。なぜここにいる? なぜ襲われた? ネムにはまだ早いのだ。お前のせいで、見なくてもいいモノを……」
「え? それって、さっきの犬のような――」
「黙れ!!」
ディルクは言葉を遮るように怒鳴りつけた。
「お前が現れたせいで静寂が破られてしまった。違うか? もう一度言う。立場をわきまえろ。これ以上あの子の心を惑わせるな」
陽汰は何も言えず、立ち尽くしていた。
ディルクが階段を上がっていく後姿を見つめることしか出来なかった。
姿が見えなくなり、陽汰は部屋に戻ることにした。
なんとも――複雑な想いで。


